トリドーシャってなに?
アーユルヴェーダやヨガというと、必ず聞く「トリドーシャ」という言葉ですが、一体なんのことでしょうか。
トリドーシャとは、体を作るエネルギーです。それと同時に、病気を作り出す原因でもあります。
人間は体力があったり生命力があるほうが病気になりやすいのです。
病気というのは、もともと人間が肉体にもったドーシャというエネルギーバランスが乱れたときに起こるからです。
生命あるものは「五大要素(パンチャ・マハブータ)」と、それを元に組み合わされた「三大要素(トリ・ドーシャ)」からなります。
そして、トリ・ドーシャは生まれたころに決定されて、そのバランスを保つことで健康でいられます。
しかし、生きていく中で様々な要素がかさなってそのバランスも崩れてしまうものです。
ドーシャとは「乱れやすい」という意味のサンスクリット語です。
これは、体のを構成する3つのエネルギーは乱れやすいということなんですね。
ドーシャは、「使いすぎ」、「使わなさすぎ」、「誤った使い方」の3つが原因で乱れます。
だから、そのバランスを取るために、アーユルヴェーダの生活の仕方があるんです。
それでは、今回はトリドーシャ、ヴァータ・ピッタ・カファをアーユルヴェーダの概念からご紹介していきます!
ヴァータ【Vata・風】とは?
ヴァータはトリドーシャの1つの要素です。「風」の要素としてトリドーシャでは表されます。
ヴァータは五大元素の「風」と「空」からなるドーシャです。
風邪のように軽やかで動きがあるという特徴のあるエネルギーです。
トリドーシャの風の要素、ヴァータについてお話をしていきます。
ヴァータのグナ(性質)
ヴァータのグナ(性質)は以下のものです。
- 動く
- 冷たい
- 変わりやすい
- 軽い
- 乾燥した
- 精妙さ
- 粗さ
- 速さ
ヴァータの性質は上記のような環境や食べ物、体の状態、日常生活などを表します。
ヴァータの特徴的な事は「動く」ということ。
体が動いたり感情が動くのはこのヴァータのエネルギーであるとされています。
五大元素の「風」と「空」からなる
ヴァータは五大元素の「風」と「空」からできています。
五大元素とは、トリドーシャを構成する以前の5つの要素のことを言います。
「風」は動きや乾燥といった性質を表しています。
ヴァータを多く持つ体質の人が、軽やかにいろいろなところへ飛び回るのも風の性質がなすものです。
「空」はインドでは重要な概念で、体のエネルギーを保つための入れ物のようなものというような概念です。
五大元素の「空」
「空」という概念はインドでは非常に大切なものとされています。
「色即是空」「空即是色」という言葉を聞いたことがありますか。
これは般若心境の一文なのですが、「この世界は空である」という風に言っています。
それでは、空とはなんなのか。
空とは、「実体がない」ということです。
実体がないけれども、人間は実体があると感じています。
それは、五大元素の前の感覚器官とつながることからこれが生じています。
この件についてはまたアーユルヴェーダの宇宙論でお話をしていこうと思います。
身体におけるヴァータドーシャ
ヴァータドーシャには細かい種類があります。
- プラーナ
- ウダーナ
- サマーナ
- ヴャーナ
- アパーナ
それぞれは胸部、頭部内、腹腔内、血液循環、大腸に存在します。
ヴァータドーシャは以上のように体の様ざなまところに存在しますが、身体におけるメインのヴァータドーシャは、主に下腹部に存在します。
なので、大腸などがヴァータの座であると言われるのです。
ヴァータドーシャが乱れたとき
ヴァータが乱れたときは以下のような不調が現れてきます。
- 声がかすれる
- 手足の震え
- 便秘
- 尿閉
- 不眠
- 精神不安定
- 呼吸困難
- 四肢のマヒ
- 脱毛
- あらゆる種類の疼痛
- 耳鳴り、難聴
- 皮膚や髪の乾燥
人は全て3つのドーシャの中で一番最初にヴァータが乱れるといいます。
ヴァータが乱れると体が冷えてきて、めぐりが悪くなり、更に別の体調不良に陥ります。
「冷えは万病のもと」ということが、このトリドーシャであらわすことができるんですね。
ヴァータが乱れる原因
それでは、ヴァータが乱れてしまう原因はどのようなものでしょうか。
基本的には日常生活の乱れが原因となってしまっています。
全ての病気はヴァータの乱れから起こるとも言われているので、要チェックですよ!
- うるさいところにいる
- 乾燥した場所にいる
- いつも忙しい
- 食事の時間が不規則
- 食事のバランスが悪い
- 睡眠時間がバラバラ
- 睡眠時間が短い
- 休む時間がない
- おしゃべりばかりしている
- 旅行や出張など移動が多い
ピッタ【Pitta・火】とは?
ピッタはトリドーシャの「火」の性質と言われているエネルギーです。
主に消化・吸収の役割を担うエネルギーで、「火」と「水」の5代元素からできています。
ピッタの人の特徴は火のように情熱的で、レンジャー物のレッドのようにリーダーシップをもっている人物です。
それでは、ピッタの詳細を説明していきます。
ピッタのグナ(性質)
ピッタのグナ(性質)は以下の通りです。
- 熱い
- 鋭い
- 軽い
- 湿性
- 微油性
- 流動性
- 酸臭性
ピッタの性質は上記のような環境や食べ物、体の状態、日常生活などを表します。
スパイスなどの辛いものやアルコール飲料などの刺激のあるものはピッタを上げます。
なので、ピッタ体質の人はこれらを取りすぎないように注意が必要です。
5代元素の「火」と「水」からなる
ピッタは5代元素の「火」と「水」からできあがっているエネルギーです。
「火」は消化のエネルギー、アグニをあらわしています。
消化器官のアグニは粘膜や消化酵素なども存在するので、「水」も存在します。
また、目に火が宿るというように、目はピッタの「火」のエネルギーが座しています。
漫画でもよく目がメラメラしていることが描かれますよね。
これは、ピッタの「やる気」や「競争心」が上がってきているものです。
身体におけるピッタドーシャ
体に存在するピッタは以下の5つに分けることができます。
- ランジャカ
- バーチャカ
- アーローチャカ
- サーダカ
- ブラージャカ
このピッタはそれぞれ胃内、胃と大腸の間、目の中、心臓内、皮膚に存在します。
主に腹まわりに存在するのがピッタといわれるのは、胃の働きのように消化という性質がピッタの代表的な性質であるからです。
食べ物や情報の消化・吸収・代謝を行うのがピッタの働きと覚えておきましょう。
ピッタドーシャが乱れたとき
ピッタが乱れたときは以下のような状態になります。
- 異常な消化力
- 発熱
- めまい・失神
- 黄疸
- 視力低下
- 多発汗
- 貧血
- 出血
- 化膿
- 結石
- 極度の口渇
- 湿疹
ピッタドーシャの乱れる要因
ピッタドーシャが乱れるときは以下のような時です。
- 暑い日の外出
- 正午の外出
- スパイスの摂取
- 目の使いすぎ
- アルコールの摂取
- スポーツ観戦
- 戦いを見ること(格闘技など)
- 責任ある立場をとること
この様な場合が大いにあると感じたら、ピッタが上がっている状態になっていないか注意してみましょう。
ピッタが上がりすぎてしまうと、完璧主義になって、他人に厳しくなりがちです。
夜に散歩をしながら月光浴をすると、ピッタを落ち着けてくれますよ。
カファ【Kapha・水】とは?
カファはトリドーシャのなかでは「水」の性質とされています。
水のように上から下へ流れ、安定感のあるドーシャです。
それでは、カファの細かい性質はどのようなものがあるのでしょうか。
カファのグナ(性質)
カファのグナ(性質)は以下の通りです。
- 重い
- 冷たい
- 油性
- 緩慢
- 安定
- 柔性
- 粘性
- 鈍性
- 滑らか
カファの性質は上記のような環境や食べ物、体の状態、日常生活などを表します。
ただし、カファの「冷たい」はヴァータのカラッとした冷たさとは違って、梅雨の季節のようにじめっと湿度ある冷たさを言います。
5大元素の「水」と「地」からなる
カファは「水」と「地」からなるトリドーシャです。
「水」は粘液や細胞基質などの水分全般をいいます。
体の水分を主に指すので、むくみが生じているのはカファの性質が乱れているからです。
また、性格としては流動性があって、人当たりが柔らかいという傾向があります。
「地」は、固定というカファ特有の性質を表します。
消化吸収したものを体の一部として固定していく役割です。
カファ体質の人ががっしりした体つきをしていたりグラマーだったりするのは、食べたものを効率よく固定していることからです。
身体におけるカファドーシャ
体におけるカファドーシャは以下の5つに分けられます。
- スレーシャカ
- クレーダカ
- ボーダカ
- タルパカ
- アヴァラムバカ
それぞれは、関節、胃、舌、気管支、鼻、脂肪、咽頭、咽喉に存在します。
カファドーシャは主に胸部に存在すると言われているのは、肺や気管支の働きがメインとしてカファの働きがだからです。
物質的、心理的な安定(固定)がカファの役割です。
心はいつも波立たず、穏やかに過ごせる人がカファのこの安定感を表しています。
一方で、これが行き過ぎると心が鈍磨になりなかなか反応しなかったり面倒臭がったりします。
カファドーシャが乱れたとき
- 過度の肥満
- 過眠傾向
- 食欲ひ鍼
- 消化力の低下
- 痰や鼻水の増加
- 無気力
- 無表情
- 思考力鈍磨、低下
- 嘔吐、吐き気
- むくみ
- 尿量の増加
- 口が粘る
- 異常な恐怖
カファドーシャが乱れる要因
カファドーシャが乱れる要因は以下のとおりです。
- 雨や曇りのどんよりとした日
- 同じことの繰り返し
- 湿度のある寒い環境
- あぶらっこい食事
- 甘い食べ物
- 運動をしない
カファが増えてくると、やる気がなくなったり面倒臭がったりする傾向があります。
そういったときにやる気を出して動き始められればいいのですが、それができない場合は温かいものを摂取してバランスを取るようにしましょう。
トリドーシャは3つの要因で乱れる
トリドーシャは「やりすぎ」「やらなさすぎ」「間違えたやりかた」の3つの要因で乱れます。
例えば、ヴァータだったら、動きすぎてしまう事で体のヴァータを乱します。
動きすぎると疲れてしまう上、交感神経が優位になってしまってなかなか眠れなくなってしまう状態になります。
そうすると、さらに脳内が休まらなくなり、ひどい場合は麻痺症状などが起こってしまいます。
また、ピッタの場合は、夏の暑い日、昼間外に出る事はすでにピッタを乱します。
そのときに日焼けどめを塗らずに外出すると、皮膚が炎症して、状態が悪いとやけどのようになってしまいます。これも、ピッタの症状です。
そして、そんな炎天下の中でスポーツをすると、競争心という要素からでもピッタが上がり、熱中症になりやすくなってしまうでしょう。
夏のスポーツはとても気持ち良いですが、ピッタの乱れによる健康被害が出る可能性が高まるので要注意です。
カファは雨の日にどんよりとしてなんだかやる気がない、鬱っぽい気持ちになっているとき、すでに乱れています。
そうするとまた眠くなって布団に戻りたくなってしまいます。
そこで寝るとまた起きたときに体が重く何もしたくなってしまいます。
これが続いて何もしない状態が続いたら要注意です。
最初に動きたくないと思う気持ちを打ち破って、思いっきり外に出ていくようにしましょう。
このように、たくさんやってしまうこと、やらなさすぎてしまうことによって、ドーシャが乱れています。
なので、これはラサをしっかりと把握して、自分の中でバランスを取るようにしましょう。
トリドーシャで笑顔を作る
アーユルヴェーダを実践する上で、トリドーシャの理解は非常に重要です。
トリドーシャさえ覚えて、それを応用していくことで、あなた自身や身近な大切な人の笑顔を作っていくことができます。
そのためには道のりが長く感じるアーユルヴェーダですが、ひとつひとつ理解していきましょう。
このトリドーシャを知ることで自然の法則を理解して、あなた自身をしっかりと深く見つめることができます。
そうなってくると、明らかに自分自身への気づきが変わり、周囲の人との付き合い方が変わってきます。
ぜひともあなたもアーユルヴェーダを日常の一部にしてみてくださいね!