6味だけではなく、その次の段階のヴィールヤ(薬力源)、ヴィパーカ(消化後の味)について、ドーシャへの影響とともに説明していきます。
この記事の内容
- アーユルヴェーダの食事の作用とは?
- ラサ・ヴィールヤ、ヴィパーカとは?
※食事の基本的なことについて知りたい場合はこちらの記事もご覧ください。
すべてのドーシャに通じることを説明しているので、この記事を読んだ方が理解度が深まるはずです。
アーユルヴェーダの食べ物の消化前後の働き
アーユルヴェーダでは、食べ物が人体に影響を与えるのには3つの段階があるといわれています。
味は最初に口に入れたときの甘味や酸味などの味覚だけを指すものではありません。
アーユルヴェーダにおける「味」は消化の段階や老廃物の生成、体の構築ともちろん関連があり、食べ物の味がどの場面でドーシャに影響を与えるのかをわかりやすくしています。
それはざっくり以下の通りです。
- ラサ(味):6つの味「甘味・酸味・塩味・辛味・苦味・渋味」がある
- ヴィールヤ(薬力源):「熱性」「冷性」がある
- ヴィパーカ(代謝後の味):「酸」「辛」「甘」の味
最初に食べる6つの味(ラサ)は、体の中でエネルギーになるものや、最終的に私たちの体の栄養素や老廃物となるものにも、もちろん影響を及ぼします。
コラム:食事は薬だ
食物が適切でなければ薬はいらない。
食物が適切であっても薬はいらない。
ーインドのことわざ
インドではこのような食事に関することわざがあります。
この言葉は「普段の食事が適切でない場合は、薬を飲んでも意味がない。食養生からしていく必要がある。
食事が適切であれば、薬を飲むような病気にはかからない。体のバランスが崩れることはめったにないから。」
このような意味です。
インド医学では、病原体による体調不良はもちろん存在しますが、心身のコンディションがその病気を受け入れるかどうか作用するという考えがあります。
その心身のコンディションを整えるのは、アーユルヴェーダの膨大な経典が唱える通り、日常生活です。
特に、食事は心身をつくる栄養素であり、ドーシャを整えるものです。
このように、普段の食事は私たちの心と体のバランスに大きな影響を与えるのだとわかっていたのですね。
人間は食べ物の影響をダイレクトに受けます。
ラサ、ヴィールヤ、ヴィパーカを知ると、さらに自分の体に合ったものを納得して選んでいきやすくなるはずです。
それでは、この段階をそれぞれ説明していきます。
①ラサ(味):6つの味「甘味・酸味・塩味・辛味・苦味・渋味」
- 甘味:ヴァータ↓、ピッタ↓、カファ↑
- 塩味:ヴァータ↓、ピッタ↑、カファ↑
- 酸味:ヴァータ↓、ピッタ↑、カファ↑
- 苦味:ヴァータ↑、ピッタ↓、カファ↓
- 渋味:ヴァータ↑、ピッタ↑、カファ↓
- 辛味:ヴァータ↑、ピッタ↓、カファ↓
上の表は6味とドーシャの関係です。
ラサ(味)は食べ物を口の中に含んだときに感じる味わいのことで、それぞれが上記のようにドーシャに影響を及ぼします。
人は食物を食べたとき「甘味、酸味、塩味、辛味、苦味、渋味」の6種類の味が感じられます。
現代科学において人間がもつ味蕾には4種類の味しか感じられないといわれていますが、アーユルヴェーダではこの6種類で判断しています。
ラサは1つの食べ物につき1つの味とは限りません。
また、料理によってもいろいろな味わいになります。
最初のラサを知っておくことで、消化後の味やドーシャに与える影響がわかるのでぜひとも知っておいてほしいと思います。
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アーユルヴェーダの6つの味(6味:ラサ)とは?各味の食べ物も紹介
②ヴィールヤ(薬力源):「熱性」「冷性」がある
ヴィールヤとトリドーシャの関係性
- 熱性:ヴァータ↓、ピッタ↑、カファ↓
- 冷性:ヴァータ↑、ピッタ↓、カファ↑
ヴィールヤは薬力源と訳されていますが、適切な日本語は見当たらないといいます。
このヴィールヤは、食べたものによって体に影響を与える効果のことを示しています。
例えば、熱性であれば、消化促進作用、解毒作用、斎下作用、発汗促進作用、口乾などの薬理作用があります。
冷性は、抑制作用、体力増強作用、活気力増大作用、水分増加作用、収れん作用などがあります。
これらは体内に入った食べ物が、どのような状態になるのかを示しています。
なので、消化力が低下した夏の日に熱性のものを食べると、消化促進作用によって弱った消化力をアップすることができます。
ヴィールヤ(薬力源)とラサ(6味)の関係
さらに、ヴィールヤとラサ(6味)の関係も以下に示します。
これで、舌で感じる味がどのような薬力源があるかわかるはずです。
ヴィールヤとラサ(6味)の関係性
- 熱性:酸味、塩味、辛味
- 冷性:甘味、苦味、渋味
熱性のものは基本的に消化の火を強くするので、食べるとピッタが上がるものに関連しています。
脂っこいものや消化に時間がかかる肉類などを食べるときに、七味唐辛子やからし、わさびなどの薬味類を一緒に食べることがありますよね。
これは、熱性の性質を利用して消化の火を強くし、消化不良に陥らないようにしているわけです。
③ヴィパーカ(消化後の味):「酸」「辛」「甘」の味
ヴィパーカとトリドーシャの関係
- 甘味代謝過程:甘味、塩味は消化後、甘味物質となる
- 酸味代謝過程:酸味は消化後、酸味物質となる
- 辛味代謝過程:辛味、苦味、渋味は消化後、辛味物質となる
ヴィパーカは代謝後の味や消化後の味といわれています。
甘味が胃で、酸味が十二指腸で、辛味が大腸で代謝がおこなわれるといわれています。
この消化過程がそれぞれの臓器で行われた後、甘味物、酸味物、辛味物が生成されて体を作ると同時に、老廃物としてそれぞれのドーシャが増加します。
つまり、甘味代謝過程後には老廃物としてカファのエネルギーが増大し、酸味代謝過程後には老廃物としてピッタエネルギーが増大し、辛味代謝過程ではヴァータエネルギーが増大します。
それゆえ、食べ物の好みや摂取する食べ物の種類によって、乱れるドーシャが変わってくるのです。
アーユルヴェーダの食べ物は奥が深い
アーユルヴェーダは現代の解剖学や科学とは使う単語やエネルギーの概念が異なります。
それでも、結果としてそれが理にかなっているものです。
そして魅力的なのは、味という概念で食事をとらえることで、栄養学を深く知らなくてもバランスが取れた食事や自分の体調を整える食事をとれることです。
さらに食物にかんしてはたくさんの性質が存在して、それが複雑になっています。
しかし、ここまで勉強されたならお分かりの通り、私たち日本人は季節に合った伝統的な日本食を食べていれば体のバランスを崩しにくいということです。
ですので、この理論をもとに、毎日の食事のときにアーユルヴェーダを実践してみてほしいと思います。
参考文献
アシュターンガ・フリダヤム