この記事の内容
- アーユルヴェーダにおけるチョコレートの性質と働き
- チョコレートは科学的に体と心にどのような影響を与えるのか
- チョコレートを有益に食べる方法を3つご紹介
※5分程度で読めます。5分後には以前よりも罪悪感なくチョコレートを食べられるようになるはずです。
アーユルヴェーダにおいてチョコレートは刺激的な食べ物
アーユルヴェーダではチョコレートはどのようなものだと認識されているのでしょうか。
約5000年前に成立したアーユルヴェーダはかなり古く、現代存在する食べ物が載っていないこともしばしばあります。
しかし、トリドーシャ理論やトリグナなどのアーユルヴェーダで使われている法則にのっとり、当時の経典には載っていなかった食物や文化圏の違うものも現代医学や科学を交えて、アーユルヴェーダでどのような立ち位置なのか研究されています。
今回はチョコレートとアーユルヴェーダについて内容を深めていきたいと思います。
アーユルヴェーダ的なチョコレートの性質は「ラジャス」
アーユルヴェーダではすべての食材にどのような性質があると分類されます。
チョコレートは「刺激作用とともに生体系を抑制する」作用があるとアーユルヴェーダでは言われており、これを性質で言えば「ラジャス(激情性)」といえます。
ラジャスとはトリグナ(心の質)のひとつで、ざっくり言えば魂を多い囲んでいる3つの心の質です。
トリグナは「サットヴァ(純粋性)」「ラジャス(激情性)」「タマス(暗黒性)」があり、サットヴァに満ち溢れた生活をしていると、トリドーシャは全てバランスが整います。
ラジャス優勢の状態ではヴァータとピッタが乱れた状態に、タマス優勢の状態ではカファが乱れた状態になります。
アーユルヴェーダのサットヴァ・ラジャス・タマスの性質を紹介
チョコレートは心と体にエネルギーを与えるがピッタを乱す
チョコレートは心と体に燃えるような活動的なエネルギーを湧き上がらせてくれます。
しかし、純粋な思いから作られるエネルギーではなく、欲望や切望、執着や嫉妬などの感情をはらむもので、心は神経質ともいえる状態になります。
先ほども言ったように、ラジャス(激情性)という性質は、ピッタとヴァータを乱します。
なので、チョコレートを食べると活発になる一方で、それが行き過ぎると気持ちが落ち着かずに小さなことに対しても過剰に反応してしまうのです。それが、イライラという心理状態になって表れてきます。
また、体のトラブルとしては、頭が冴えてしまってなかなか寝付けなくなってしまったり、ほてりや皮膚のトラブルとして現れてしまうことがあげられます。
科学的見解ではチョコレートと皮膚トラブルの間の関係はまだわかっていないといわれていますが、アーユルヴェーダでは関係ありとされています。
・心と体の乱れ→皮膚のトラブル、イライラ、すぐに誰かに当たりたくなる、ほてり……など
・良い面→エネルギーが停滞しているときに活力を与えてくれる
チョコレートを食べるとリラックスできる!けど…
実際にチョコレートを食べるとリラックスできるような気持になりますよね。よくわかります。私もチョコレートなしでは生きられないと思っていたことがありますから。
ストレスがあるときには「チョコレートが食べたい!」という欲求がじわじわとわいてきます。
しかし、これは一時の快楽的なものです。
チョコレートに含まれる砂糖や油分を食べることで、人間はストレス状況下でもそれを和らげるホルモンを分泌させます。
これは、ヴァータが乱れたとき(疲れたとき)に、無性にマックのポテトやケーキなど甘いものを食べたくなるのと同じ作用です。
なので、対処方法としては、チョコレートを食べたいと思ったときにはチョコレートを食べても全くかまいませんが、それ以外のストレス発散方法を自分の中で作っておくことをオススメします。
科学的なチョコレートが与える体と心への影響
近年ではチョコレートが健康にいいとされる化学的な研究結果がたくさんでてきています。
でも、実際にどのような影響があるのかはなかなか知らない人が多いと思いますので、ご紹介します。
良い影響
- 血管を広げ血行が良くなる
- 精神的・肉体的に活動的になる
- 抗ストレス作用がある
悪い影響
- 疲労感を感じやすくなる
- 肥満につながる
チョコレートの良い影響
チョコレートやココアは最近の研究において、かなり健康によいのではないかという結果が多く見受けられます。
特に、砂糖などがあまり入っていないビターチョコレート(カカオ75%)などでの実験において、このような良い結果が結論づけられています。
それを前提としてチョコレートの良い影響をお伝えします。
血管を広げ血行をよくする
チョコレートやココアに入っているカカオが小腸から体に吸収されることで血管を拡張する作用があることが発表されました。
炎症がある血管は血液が通る道が狭くなってしまうのですが、チョコレートを食べることでその道を広くすることができるので、医学的な応用が期待されています。
精神的・肉体的に活動的になる
静岡県立大学の研究によると、チョコレートを食べることによって「活動的になる」や「頭がさえる」などといった体の感覚があったという結果が得られました。
心理学を始め、ヴェーダ哲学でも「人間は思考が行動になる」ともいわれています。
そのため「頭がさえる」と感じた人は堕落的な行動を送るよりも、活動的な行動つまり、肉体的に活動的になったのでしょう。
また、ダークチョコレートを1日25g、4週間摂取したとき、摂取しなかったグループと比較すると、チョコレートを食べたグループの方が認知能力が優位に向上したという研究結果もあります。
ダークチョコレートの成分が、神経成長因子であるNGFというたんぱく質が増加したことによって認知能力が高まったのではないかと言われています。
抗ストレス作用がある
チョコレートには抗ストレス作用があるということが様々な科学的研究からわかってきています。
チョコレートに含まれるカカオポリフェノールを摂取することによって、動物実験や人体試験も通じて体内のストレスホルモンのレベルが下がったという結果があります。
また、抗ストレス食品として「GABA」というアミノ酸が入っているチョコレートも販売されていますね。
確かにチョコレートを食べると、ほっとしたりリラックスしたりする気持ちになることがあります。
その一方で、心理学のチョコレートのストレス研究では「チョコレートに含まれるカカオの薬効よりも、チョコレートを食べたという感覚的体験こそが重要である」という結果も発表されています。
双方の実験方法が異なるので一概に比較するものではありませんが、いずれにせよ、心と体はつながっているので気持ちが「リラックスした」と感じれば体も緩んでいくし、その反対もしかりです。
チョコレートの悪い影響
薬も飲みすぎれば毒になってしまいます。
なので、もちろんチョコレートも食べすぎることで悪い影響が体におこりえます。
この件についてもお話をしていきます。
めまいや不眠につながる
チョコレートにはテオブロミンというカフェインに似た覚醒作用のある成分が含まれています。
なので、ビターチョコレートやカカオの含有量が高いものを摂取しすぎると、めまいや不眠、頭痛や腹痛を引き起こすこともあります。
なので、1日に大量に食べて何とかしようとするのでなはく、継続して少しずつ食べていってあげるとよいでしょう。
肥満につながる
チョコレートといっても、「チョコレート風味」のものであったり「ミルクや砂糖がふんだんに使われたチョコレート」を毎日食べることは肥満につながってしまいます。
特に、子ども用のビスケットとチョコレートがくっついたお菓子や、ミルクチョコレートを毎日大量に食べることはやめておきましょう。
言うまでもありませんが、カカオの含量はそこまで多くないので利益は得られずにただ甘いお菓子をたしなんでいるだけになります。(もちろん、たしなむのはOKですが、健康を目的とするならNGです)
依存してしまう
チョコレートなどの嗜好品は依存症になる可能性が大いにあります。
特に、砂糖が多く含まれているものは、血糖値をジェットコースターのように上げ下げするので、糖分をとってもさらに欲しくなって、その結果砂糖がないとイライラしやすくなることもあります。
そして、チョコレートに依存してしまう理由として、ストレス環境下にあることがあげられます。
普段からストレスを感じていて、それを無視して対処療法的にチョコレートに逃げてしまうこともこの理由として考えられます。
この場合は、ストレス環境を変えるか、自分の感じ方をコントロールしていけるようにならないと、状況は変わっていかないでしょう。
チョコレート原料「カカオニブ」の主な4つの栄養素
- ポリフェノール;抗酸化作用、渋み・苦味のもと
- テオブロミン ;血管拡張作用、体温上昇、利尿作用
- カフェイン ;覚醒作用、血管拡張作用、利尿作用
- リグニン ;整腸作用
チョコレートの原料は「カカオニブ」と呼ばれるもので、カカオニブの地点でカカオ100%です。
これは、カカオ豆に入っている種子の皮を除いたもので、これに砂糖やミルク、油脂を加えることで私たちの知っているチョコレートになります。
チョコレート原産地の中南米では、古代マヤ文明の人達がこのカカオの実から得られたものから苦い飲み物として、儀式用に使われていたといわれています。
カカオはそのまま少量いただけば、生薬のような働きをするものの、砂糖とミルク、油脂を加えることで食べると幸福感が得られ、人間が必要以上に欲する食べ物になってしまっているといえるでしょう。
アーユルヴェーダ式チョコレートを有益に食べる方法3つ
チョコレートはやっぱり食べると幸せな気持ちになるのでなかなかやめられないですよね。
そんなあなたに、チョコレートを有益に食べる方法をお伝えします。
カルダモンやクミンで中和する
アーユルヴェーダ的にチョコレートは「刺激作用とともに生体系を抑制」ということなので、体と心を活発にしながらも、同時にリラックス効果を得られるということです。
しかし、一方でチョコレートを食べたとき、活発になった後には憂鬱になってしまう傾向があるという専門家による研究結果もでています。
なので、この作用を中和するためには「カルダモン」や「クミン」を一緒に摂取してあげると良いといわれています。
カルダモンはアーユルヴェーダの6味の全て兼ね備えているスパイスでとてもさわやかな香りが特徴です。
クミンはカレーの香りのメインとなるスパイスですが、コレステロール値を下げてくれたり、鎮静作用があるといわれています。
ホットチョコレートを作ってその中にパウダーのカルダモンとクミンを入れてみると、いい感じのチャイならぬスパイスチョコレートドリンクが完成するので、ぜひお試しください!
砂糖含量少なくカカオの含量が高いものを食べる
「チョコレート」といっても、その中身は純粋なカカオ100%ではありません。
食品表示の裏を見ればわかる通り「砂糖、全粉乳、植物油脂」との表記があります。
砂糖は正しい量をとれば私たちのエネルギー源になってくれますが、チョコレートと一緒に砂糖を摂取してしまうと、いつの間にかそれに依存してしまう恐れがあります。
砂糖を摂取することで依存症になってしまうことを、マイルドドラッグと呼ばれています。
なので、チョコレートを食べる際には砂糖の含量を少ないものにして、本来のカカオの恩恵を多くえられるようにするのが得策でしょう。
体や心がだるい時に食べる
体が心がだるい時でも、どうしてもやらなくてはいけないときがありますよね。
そんな時には強制的に体と頭を動かすためにチョコレートを食べて活性化させるのも一つの手です。
まさに、栄養ドリンクを飲んで脳を活性化させて、とりあえず目の前に積み重なっているタスクを処理しなくてはいけない時と同じ状態です。
ただし、この方法はテスト前の徹夜のように諸刃の剣です。
なので、本当にやる気が無いけれどやらなくてはいけない時だけにするのがおすすめです。
また、普段から体のだるさや心の活力のなさを感じている人は、ストレスによって副腎から分泌されるコルチゾール(別名ストレスホルモンと呼ばれる)が多く分泌されている可能性もあります。
その場合を含め、だるさが気になる人は体と心からのSOSサインなので、自分の心と体のケアをしてあげることが大切になってきます。
アーユルヴェーダ式に最適な量でチョコレートに向き合おう
科学的には最適な量を食べることでチョコレートからは恩恵が受けられるといわれています。
ただし、アーユルヴェーダにおいてチョコレートは嗜好品とされて、やっぱりラジャスを上げるものなので、ヴァータとピッタを乱すものとされています。
食べるものは私たちの心と体を作り上げるので、何となく食べ続けるのはやめて一度立ち止まってどれくらいどのようなものを食べるのかチェックする機会にしても良いでしょう。
チョコレートは悪者ではない
これだけ体が乱れるといろいろ書いておいてなんですが、チョコレートは決して悪者ではありません。
どんな食事も、とりすぎれば体に悪影響を及ぼすことは誰もがわかりますよね。それと全く一緒です。
なので、自分の体はどのドーシャが乱れやすいのか、心はどのようなグナが優勢になりやすいのかを把握して食べることで、自分自身をコントロールすることになるはずです。
自分の心と体を知ることが何より大切
心と体がととっていないと、甘いものが欲しくなってしまいます。
それが、実際にチョコレートをもっと食べたいと思ってしまう状況であることも事実です。
なので、自分の心と体を普段から観察して「今は体はだるいと感じているな」とか「心が疲れているな」と察してあげることが大切です。
これはチョコレートだけの問題ではなく、お酒やショッピング、ギャンブル、恋愛関係など、自分の心と体を高揚感にもっていってくれるものや行動も含まれます。
なので、まずは自分の心と体を知るためにも、アーユルヴェーダの体質診断や普段の体と心の乱れに耳をすませるようにしてみてくださいね。
参考文献
デビッド・ベントン「チョコレートの魅力:それは心理的なものか生理的なものか?」:第16回チョコレート・ココア国際栄養シンポジウム(2011)
横越英彦「カカオ摂取の自律神経系に及ぼす影響」:第8回チョコレート・ココア国際栄養シンポジウム(2003)
横越英彦「チョコレートのリラックス効果」:第9回チョコレート・ココア国際栄養シンポジウム(2004)